#9 インタビュー:セシル・マクロリン・サルヴァント
グラミー賞ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を3度受賞した、ジャズ・ボーカリスト:セシル・マクロリン・サルヴァントさんがブルックリンからのオンラインゲストでした。
フロリダ州マイアミでハイチ人の父とフランス人の母のもとに生まれ、5歳でピアノを始め、8歳で合唱グループでパフォーマンスを始めました。その後、フランスで法律とバロック音楽とジャズを学び、2010年21歳の時にセロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティションのボーカル部門で優勝。2013年に発表したアルバム『WomanChild』がいきなりグラミー賞候補になり、スターダムを駆け上がってきました。その後発表したアルバム『For One to Love』『Dreams and Daggers』『The Window』でグラミー賞ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞。現代ジャズ・ボーカリストの最高峰ともいえるアーティスト。そして、作曲、ビジュアル・アートも手がける多才な方です。
Cecile Mclorin Salvant『Melusine』
セシル・マクロリン・サルヴァントが2023年3月に発表した最新アルバム。
フランスの伝承、水の精霊メリュジーヌの物語をオリジナルの楽曲と古いものは12世紀まで遡るという楽曲を組み合わせて紡いでいっているアルバム。メリュジーヌというのは、土曜日になると下半身が蛇になってしまうという女性。結婚相手のレイモンダンにこの様子を見られてしまい、龍の姿になって彼のもとを去ったという伝説。
D'un feu secret
17世紀のバロック時代の楽曲。
Dame Iseut
とても古い12世紀の歌。歌詞しか残っていなかったので、曲はセシルさんが作曲したそうです。「相手を許したいんだけれども、何が悪いかわからないから謝らない相手を許すことができない」ということを歌っているそうです。それがまさに、物語でも夫に裏切られて、見られたくない姿を見られて龍になって逃げていくというメリュジーヌの物語の最後でも起こること。
Cecile Mclorin Salvant「I Lost My Mind」
セシルさんの2022年のアルバム『Ghost Song』より。この曲はコロナ禍の最初の頃に不安に感じていて書いた曲だそうです。アルバム『Ghost Song』は、全体を通してノスタルジックな気持ちになったりとか、イマジネーションと戯れることにフォーカスを当てたアルバムで、パンデミックにおいて何かを失うことは多かったが、失ったものを欲しいと思う気持ち、その欲望からクリエイティビティは来るものだと思っていて、それがテーマになっているそうです。
Cecile Mclorin Salvant「Somewhere」
セシルさんは6月下旬にジャズ・ピアニストのサリヴァン・フォートナーとのデュオで来日されるそうです。セシルさんとサリヴァン・フォートナーさんのデュオで発表されている2018年のアルバム『The Window』より。この曲はライブ録音でレナード・バーンスタイン作曲、ミュージカル『West Side Story』の中の楽曲。