ラジオと音楽

ラジオから知った音楽のこと書いていきます

世界の快適音楽セレクション 2020年10月10日(マイルス・デイヴィス、 グレアム・グールドマン)

 

音楽ソムリエ

 

リスナーから「こんな時はどんな曲を聴けば良いのでしょうか?」という問いにゴンチチのお二人や選曲担当の方が音楽ソムリエになって答えてくれるコーナ。

 

今回は「ジャズのアドリブがよく分かりません」というリスナーからの問いに対して三上さんが答えました。すごく勉強になりましたので、書き留めました。

 

音楽の三要素として「リズム、メロディ、ハーモニー」とありますが「ハーモニー」はポピュラー音楽でいう「コード」になります。ジャズを演奏するプロミュージシャンは勝手気ままに演奏しているわけではなく、コードで使用できるスケール(音階)に基づきアドリブをしています。ですからアドリブ部分はコードスケールにある使用できる音の中から選別して演奏します。同じコードでもそのコードが曲の中でどういった位置にあり、どういう風に機能するかで使用できる音も変わってきます。従って演奏者は理論を習熟して何度も練習を重ねて適応力が十分身についた後に様々な曲の即興演奏に臨むということになります。

ジャズはアドリブが中核をなす音楽ですので、アドリブが分からない場合は無理をして聴く必要はありません。何某かの魅力を感じていらっしゃるのであれば、ジャズやアドリブが分からない場合は、無理して聴き続けるしかないです。無理しないとダメです。最初から嫌なものを感じる作品は聴かなくてよいですが、それ以外は聴き続けるうちに何となくジャズの真価が分かってくるものです。ジャズを聴くと心地よと芽生えてきたらもう大丈夫です。真価が分からなくても、そこに喜びがありますので音楽の本来の価値はジャズから会得したことになると思います。

私は中3の時からマイルス・デイヴィスを聴き始めて、ほぼ10年くらいはジャズの真価は全く分かりませんでした。今でも十分に分かっていないとは思いますし、それがジャズの奥深い部分でもあり、簡単に分からないから深く飽きさせないというジャンルだと思います。

マイルス・デイヴィスのモード・ジャズの名盤『Kind of Blue』から「So What」を聞いて頂きます。モード奏法はそれ以前のビバップと呼ばれるジャズアドリブとは違った理論ですが、この説明は長くなるので割愛させて頂きます。

「So What」の構成を簡単に説明します。ピアノとベースのイントロで始まって、ベースのテーマで本編に入ります。テーマが終わったら、マイルスのトランペットがアドリブを開始します。モードで言うところのドリアンモードでアドリブをしますが、スケールでない音も演奏する箇所があります。続いてテナーサックスのジョン・コルトレーンの演奏が始まります。これもドリアンモードで演奏しますけれども、所々で旧来のビバップ・スタイルのジャズアドリブが顔を覗かせる部分もあります。次にキャノンボール・アダレイのアルトサックスのアドリブが始まりますが、キャノンボール・アダレイは全くモード演奏は行わず、旧来のビバップ・ジャズのアドリブで終始します。最後はピアノのビル・エヴァンスのモーダルなピアノプレイでアドリブは終了します。

  

Miles Davis「So What」

KIND OF BLUE

KIND OF BLUE

  • アーティスト:DAVIS, MILES
  • 発売日: 2009/02/06
  • メディア: CD
 

 

この曲の基本的なコードは2つだけしかありません。Dm11とE♭m11。つまり展開部分で半音上がっているだけ。それでもこれだけの奥深い音楽が出来上がります。

プレイヤーは研鑽して習得してきたアドリブプレイは一瞬の閃きだけではなくて、色んなものに依存しています。一瞬の閃きのみに依存しているものではありません。演奏者が蓄積してきた音の流れや組み合わせを記憶の中から出してくる時に、始まりの少しのズレとか微妙なリズムの違いとか、音が出た時の強弱の差によって、同じフレーズでも一瞬一瞬に全く新しいものに生まれ変わります。そうであるからこそ、演奏者は毎回新鮮な感動で演奏に臨むことができます。

 

 

 

 

トピックス

 

Graham Gouldman「Standing Next To Me」

10ccのメンバー:グレアム・グールドマンのソロアルバム『Modesty Forbids』より。

「こういう曲はリンゴ・スターのドラムがピッタリなんだよな」と歌っていて、実際にドラムを叩いているのはリンゴ・スターだそうです。

Modesty Forbids

Modesty Forbids

  • アーティスト:Graham Gouldman
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: CD