昨年からTOKYO FMでやっている「村上RADIO」。村上春樹さんがDJの番組です。
私は同時間にInterFMの「Barakan Beat」を聴いているので聴いていなかった(ラジコのタイムフリーで聴けばいいのですが、不定期でやっている番組なのでついつい聴き逃してしまいました)ので、いい機会なので聴かせてもらいました。音楽評論家顔負けの音源ストックと知識をお持ちです。
番組の内容はプレイリストだけでなく、村上さんのお話も番組HPの載っています。皮肉とか冗談がうまく織り混ざってお話が面白いです。
番組最後におっしゃるお言葉がとても印象に残りましたので引用させて頂きました。
第1回 RUN & SONGS
スライ&ザ・ファミリー・ストーンのスライ・ストーンがこんなことを言いました。
「僕はみんなのために音楽をつくるんだ。誰にでも、馬鹿にでもわかる音楽をつくりたい。そうすれば、誰ももう馬鹿ではなくなるから」
いい言葉ですよね。僕はすごく好きです。
第2回 秋の夜長は村上ソングで
今日の最後は、スタン・ゲッツの言葉です。
「僕の中には強いバネのようなものがあって、それが僕を無意識のうちに、パーフェクトな音楽の高みにまで、はね飛ばしてくれるんだ。そしてその高みのために、僕は人生の他のすべてを犠牲にしてきた」
美しい音楽は素晴らしいものだけど、その達成の裏には多くの場合、崖っぷちでの危うい魂のせめぎあいがあります。アレサ・フランクリンの場合もそうだったけど、音楽を音楽として楽しむのと同時に、僕らはその裏にあるもののことをやはり忘れてはいけないんでしょうね。
第3回 村上式クリスマス・ソング
ちょっと前に「僕の戦争を探して」というスペイン映画がありました。ビートルズ・ファンの小学校の先生が、ビートルズの歌詞を教材に子供たちに英語を教えているんですが、どうしても歌詞にわからないところがあって、それについて本人に尋ねるために、ちょうどスペインで「僕の戦争」という映画の撮影をしていたジョン・レノンに会いに行く話です。 なかなか素敵なロード・ムービーでした。その映画の中で、先生が旅で出会った若者に向かってこう言います。
「ビートルズの曲には楽しいものもあれば、切ないものもある。でもどれも心を打つ。なぜなら人生とは楽しくて、そしてまた切ないものだからだ」
考えてみればその通り、当たり前のことなんだけど、映画の中で正面切ってそう言われると、「たしかにその通りだよな」とふと心を打たれました。
切ないものがあってこそ、楽しいものを心からしっかりと楽しむことができます。みなさんもどうかできるだけ楽しいものを見つけて、日々を送ってください。サンタは本当に街にやってくるかもしれません。
第4回 今夜はアナログ・ナイト!
今日の最後の言葉。結構うろ覚えですが、かつてエルヴィス・プレスリーがこんなことを言っていました。
「歌手は、自分の心の穴を埋めるために歌を歌う。そのことが聴く人に伝わるとき、そこに共感が生まれるんだ」
それはきっと小説についても言えることです。結局のところ、僕らはみんな自分の心に開いた穴を埋めるために、音楽を聴いたり、小説を読んだりしているのかもしれません。あるいは歌を歌ったり、文章を書いたりしているのかもしれない。
でも、そういう空白を抱えることって、人にとって大切なことなんです。あまりそればかり意識すると疲れちゃいますけど、ときどきふと自分の中にある何かの欠落に気づくことで、人生は逆に少し豊かになったりします。
第5回 愛のローラーコースター
僕が今から40年前に『風の歌を聴け』という小説を書いてデビューしたとき、まわりの人から「あんなものでよければ、おれだって書けるよ」と言われました。そのときはあまり良い気はしなかったけど、読んだり聴いたりした人に「よし、これならおれだって、わたしだって」と思わせるのは意味のあることなんです。それはひとつのささやかな達成だったのかもしれないと、今では思います。
考えてみたら、僕は今からちょうど40年前の5月に、文芸誌の新人賞をもらって小説家としてデビューしました。おめでとうございます……と自分で言っててもしょうがないんだけど、けっこう長持ちしてますよね。
第6回 The Beatle Night
今日の最後の言葉。ちょっと長いけど、あるインタビューでのポール・マッカートニーの発言です。
「みんなは、ジョンにはハードなエッジがあり、僕のエッジはソフトだと決めつけている。長年そう言われ続けてきたもので、そういうものかと僕も思っていた。でも妻のリンダは言うんだ、『あなたにはハードなエッジがある。ただそれが表面に出てこないだけよ』って。そのとおりだ。僕はそうしようと思えば噛みつくこともできるし、しっかりハードな一面を持っている。また彼女は言う。『そしてジョンにはとてもソフトな一面があったわ』って。そうなんだ、ジョンのそういうソフトな面が、僕はすごく好きだった」
そんな持ち味の異なる、優れた才能を持つ二人がたまたま出会い、理解しあい助け合い、また時には反発しあったからこそ、あれだけ見事な音楽が次々に生まれきたのでしょうね。
その巡り会いの惑星直列的な素晴らしさに、ただ感心するしかありません。
「第5回 愛のローラーコースター」から気に入った曲を幾つか。
Robert Randolph & The Family Band「Love Rollercoaster」
オハイオ・プレイヤーズが1975年にヒットさせた「愛のローラーコースター(Love Rollercoaster)」。ロバート・ランドルフのスチール・ギターかっこいい。
「Brighter Days」という2年ぶりのニューアルバムも出ました。おすすめです。
Chic Feat. Lady Gaga「I Want Your Love」
シックが昨年リリースしたニューアルバム「イッツ・アバウト・タイム(It's About Time)」から1978年にヒットさせた「アイ・ウォント・ユア・ラヴ(I Want Your Love)」のセルフ・カバーをレディ・ガガと。かっこいいです。
- アーティスト: ナイル・ロジャース&シック,ナイル・ロジャース,クレイグ・デイヴィッド,ステフロン・ドン,エドワード・ライリー,チャールズ・V.ハリスン,ロンネル・D.コルベット,トーマス・モーガン・ロバートソン,ジョナサン・カー
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2018/10/05
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
Tom Misch「Disco Yes」
これも昨年リリースされたトム・ミッシュ(Tom Misch)のデビュー・アルバム「Geography」から。昔っぽい感じで我々年代に受けているようです。
Geography [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC564)
- アーティスト: TOM MISCH,トム・ミッシュ
- 出版社/メーカー: BEAT RECORDS / BEYOND THE GROOVE
- 発売日: 2018/04/06
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
9/1(日)に6月26日に行われた「村上RADIO」の公開録音の模様が放送されます。
18:00-18:55が前半(先週の再放送)、19:00-19:55が後半です。後半には渡辺貞夫さんが出られるようです。