古典音楽 A to Z(サラーム海上)
ジャズを通じて進化した音楽「ジャズ・フラメンコ」。マイルス・デイヴィスがスペインを旅し、フラメンコを聴き、その自由な即興に影響を受けたことからスタートしました。マイルスのモード・ジャズの完成形と言われる1959年のアルバム『Kind of Blue』には「Flamenco Sketches」という曲が収録されています。翌年の1960年マイルスはギル・エヴァンスと共にロドリーゴの「アランフエス協奏曲」やファリャの「火祭りの踊り」を取り上げたアルバム『Sketches of Spain』をリリースしました。マイルスはこの時、「フラメンコは我々のブルースのスペイン版だ」と語ったそうです。
その後、1967年になるとスペイン人のジャズのサックス奏者:ペドロ・イトゥラルデが当時デビューしたばかりのギタリスト:パコ・デ・ルシアをフィーチャーしたアルバム『Jazz Flamenco』をリリース。これがスペイン本国からの初めてのジャズ・フラメンコと言われています。
その後、パコが1973年にフラメンコにエレキ・ベースやパーカッションを取り入れた曲「二筋の川」を発表。この曲の大ヒットでヌエボ・フラメンコ(新しいフラメンコ)という呼び名が生まれ、パコ・デ・ルシアは世界的に知られるようになり、ジャズ・フラメンコも広まりました。
1977年パコはジャズ・フュージョンのギタリストのアル・ディ・メオラのアルバムに参加し、その後はジョン・マクラフリン、アル・ディ・メオラと共にスーパー・ギター・トリオを結成。ワールド・ツアーを行い、フラメンコ・ギターを全世界のリスナーに届けました。
Paco de Lucia、Al Di Meola、John Mclaughlin「Espiritu」
1996年のアルバム『The Guitar Trio』より。
ワールドジャズ
今月の特集は「ワールドジャズ」。世界中の音楽家たちによるジャズです。
今回はコーカサスの国、アゼルバイジャンとアルメニアのジャズが紹介されました。不幸なことにこの二国はナゴルノ・カラバフ地区という領土問題を抱えていて過去にも何度も戦争が起こりました。そしてこの9月末から軍事衝突が続き、双方に数百名の犠牲者が出ています。
Rain Sultanov&Isfar Sarabski「Oblivion」
アゼルバイジャンの古典音楽:ムガームを取り入れた、ムガーム・ジャズの若手サックス奏者:レイン・スルタノフとピアニストのイスハル・サラブスキの共演曲。
Vardan Ovsepian&Tatiana Parra「Qele Qele/Assum Preto」
アルメニアのティグラン・ハマシアンと並んで才能溢れる若手のピアニストでピアノ講師としても活躍するヴァルダン・オヴセピアン。彼がブラジルの女性歌手:タチアーナ・パーハとのデュオで今年発表した最新アルバムより。この曲はアルメニア音楽の父と呼ばれるコミタスとブラジル北東部音楽の父と呼ばれるルイス・ゴンザーガの代表曲をメドレーにしています。