ラジオと音楽

ラジオから知った音楽のこと書いていきます

ワールドロックナウ 2020年6月28日(パフューム・ジーニアス、ボブ・ディラン)

  

新譜紹介

 

Perfume Genius『Set My Heart On Fire Immediately』

渋谷さんの解説です。

パフューム・ジーニアスは内省的でメランコリックでダークという世界観ですが、今回の作品は少し違います。彼にとってのアーティスト活動の基本は自らのセクシャリティ、つまり自らがゲイである、そのことによって社会と折り合いがつかないこととの戦い。自分自身の性的な特色をどう自分の中で引き受け、社会との軋轢をどのように乗り越えていくかということに悩み、そこから来る自殺願望や依存症もあり、色んなものと戦いながら音楽と向き合い、苦悩や悩みが音楽に反映され、多くの人の心を打ったり、共感を得たりしてきました。

その世界観も徐々に変わってきて、今回の5枚目のアルバムでは音の世界がかなり変わってきました。これまでの悩んだり、世間との軋轢にすごく苦労したり、というところからもう少し自らのセクシャリティを肯定し、より踏み込んだ言葉で言うならば、それをちゃんと楽しむ、それをもとに人生をちゃんと生きる、という方向へ大きく変わってきています。

 

 

Without You

ポップで明るい曲。



 

Jason

(訳詞)

ジェイソンは僕を脱がした

彼のシーツに横たわりながら、彼は脱がなかった

ブーツだって履いたままだった

ぎこちなく震えながら、彼は僕の体を撫であげた

彼は怖がっていた

涙が彼の頬をつたっていた

ジェイソン、急ぐ必要はないよ

こみ上げてくるものは、たくさんあるよね

愛情を少し受け入れよう

常に少しあるはずのところ

僕は誇りに思った

温かみと母性を与えられて

一夜限りだけれども、あれだけ飲んでいたけれど

僕たちは23だった

リーダーズのCDがかかっていた

僕たちが目覚めた時、彼は出て行ってくれと僕に言った

彼のブルージーンズから20ドルを盗んだ

彼はきっとそれを見たと思う



 

Nothing at All

(訳詞)

君が何を言おうと、僕はもう知っている

僕たちの体は崩れ落ちる

一つのビートに合わせて

君が背負う悲しみが幽霊のように覆いかぶさっている

僕はそれを切り裂いて、リボンみたいに着飾るよ



 

Some Dream

ダークな彼の世界が完成度の高い形で表現されています。

(訳詞)

終わることなく、怠けて、間抜けで、僕は一日を舐める

夢からの死を舐めるよ

明るい色のリング達は、一晩中かけて集めたけれど

僕は光を揉み消した

全ての輝きが無くなるまで

そんなに難しいことなの?

彼女は僕に呼びかける

でも十分に響くことはなかった

君が電話したのは知っていたけれども

取らなかった

取り乱していて、大変だったから

ずっと、自分の見た目を完璧にしようとしていたのに

今では周りに誰もいない

葦が揺れる音だけ

僕はそれを聞いていなきゃならない

僕が愛すべきものは全て徹底的に失われた

僕が踏み出して外を見回した瞬間に、失われた

たった一曲のために、こんなことに



 

 

海外情報(NY情報)

 

Bob Dylan『Rough and Rowdy Ways』

まさか出るとは思っていなかったボブ・ディランの8年ぶりの新作。世界がコロナの不安に襲われている時に、いきなり17分間の「最も卑劣な殺人」というタイトルの新曲を出して皆んなビックリしました。アメリカではこれまで一度もシングルチャートの一位をとったことがなかったそうですが、この17分の曲でキャリア初の一位をとったそうです。この曲はJFKの暗殺について歌っていて、ディランは「どうぞみなさん安全に過ごされますように」とコメントを出しています。不安な人々に心を落ち着かせる効果があったと思われます。でもその後にアルバムまであるとは予想られておらず、大変な驚きのようです。

ディランはインタビューにも応じているそうで、彼の故郷であるミネソタ州で起きた白人警官による殺人についても語っているそうです。「見るに耐えられないものだった。亡くなったフロイドの家族とこの国のためにも早急に正義が訪れることを願いたい。」

新作の中で「死」がたくさん出てくるそうで、それについては「自分個人の死については全く考えていない。人間はいかに偉大であっても、有名であっても、死ぬときはすごく儚くて一人の人生はすごく短い。それ以上に人類の終わりについてはよく考える。」

歌詞が素晴らしくて鋭いという評価のようです。

Rough and Rowdy.. -Digi-

Rough and Rowdy.. -Digi-

  • アーティスト:Dylan, Bob
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: CD
 

 

Goodbye Jimmy Reed



 

6月30日のFMヨコハマ萩原健太のotonanoラジオ」でも栗原憲雄(ソニーミュージック洋楽ディレクター)さんをゲストに迎えて、このボブ・ディランの新譜特集でした。

ボブ・ディランは、2015年『Shadows In the Night』、2016年『Fallen Angels』、2017年『Triplicate』とアルバムを出していますが、全てカバー集で、オリジナルによるアルバムは2012年『Tempest』以来。みなさん出すと思っていなかったようで、意外性と喜びで盛り上がっています。